長期低炭素戦略に関する提言
-国民の理解及び低炭素行動による低炭素社会構築のムーブメントを-

今般の気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22、マラケシュ)において、COP21で歴史的合意を経て採択され、本年11月4日に発効したパリ協定について、2018年までに具体的ルール作りを行うことが決定され、世界は低炭素社会の構築に向けて大きく前進した。

我が国は、パリ協定を踏まえた地球温暖化防止対策の取組方針の決定、地球温暖化対策計画の策定などパリ協定後、素早い対応を取った。

とりわけ、取組方針においては「国民運動の推進」を重点施策として位置づけ、COOL・CHOICE国民運動を積極的に進めていることは評価される。

また、地球温暖化対策計画においては、温室効果ガス排出量の2030年度削減目標に加えて、長期目標として2050年度80%削減という極めて高い目標を位置づけ、パリ協定批准国としての責務を果たすべく、現在、我が国の長期低炭素戦略の策定に向け、鋭意検討が進められているところである。

今年2月に公表された国の気候変動長期戦略懇談会の提言の中では、「既存の社会構造を前提に個々の対策を積み上げるのみならず、社会構造全体を新しく作り直すための破壊的なイノベーション(社会構造イノベーション)が必要である。」としている。

目指す近未来の社会を想定し、技術の進展及びイノベーションを促す諸施策が進められ、低炭素社会の構築が確実なものになることを大いに期待している。

しかしながら、その低炭素社会構築に向けては、新たな技術やイノベーションに対する国民の理解と低炭素行動こそがすべての原点になると考える。

当法人は、一貫して「数多くの主体が参加する取組が最も重要であることを認識し、東日本大震災以降の国民意識の変容等を踏まえ、国民一人一人が主役となり、新たな視点に立った創造的温暖化防止対策プランを創出する必要がある」と主張してきた。

今回の長期低炭素戦略の策定においても、同じ考え方に立って以下の通り提言する。

1.長期的視点に立った国民運動の推進

国は地球温暖化対策計画に示した温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比26%削減、特に、業務・家庭部門の約40%削減目標の達成に向けて、現在、環境大臣をチーム長とする推進チームの設置などCOOL・CHOICE国民運動の普及定着のための諸施策が積極的に進められている。

全国の58か所の地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)においても、これまで培ったネットワークを活かし国民運動の賛同者の拡大に取り組んでいるところである。

一方で、長期目標の達成については、国はこれまでの対策に止まらず、全く新たな価値観や視点に立った施策による社会構造イノベーションが必要であるとしているが、国民理解と低炭素行動がなければ長期目標は達成できないことは明らかである。

このため地域活動で結ばれたネットワークにより醸成された「地域の新たな低炭素文化の構築」という2050年を見据え長期的かつ社会行動学的視点に立った国民運動を展開するための仕組みづくりが不可欠であり、全てのステークホルダーを巻き込んだ国民会議の設置、国民運動の基盤となる地域活動を活性化するための中核拠点の整備や活動支援制度及び事業の充実、真に豊かで持続可能なライフスタイル(低炭素ライフスタイル)の確立のためのムーブメントづくりなどあらゆる施策を総合的に進めること。

2.長期低炭素社会の構築を見据えた地域の普及啓発中核拠点の整備

地域センターは温暖化対策推進法に基づき地球温暖化防止活動の推進拠点として位置づけられており、これまで全国58の地域センターにおいてさまざまな事業を通じて普及啓発のためのスキルアップ及びノウハウの蓄積を行ってきた。

国民理解及び低炭素行動を惹起し低炭素社会を構築するためには、全国津々浦々で持続的かつきめ細かな普及啓発を進めると同時に、科学的根拠に基づき伝達技術が高い効果的な普及啓発活動を行う中核拠点が不可欠である。

このため、地域センターを中核拠点として位置づけ、国、自治体、学校、企業、NPOなど関係団体と連携した体制の再構築の義務化や、地域センターに対する財政的支援の強化など持続可能な地域の普及啓発体制の構築、整備及び支援を進めること。

3.低炭素ライフスタイルの創出

国の気候変動長期戦略懇談会は、「人々の価値観、ライフスタイル・ワークスタイルの在り方は温室効果ガスの排出に大きく関わっている。従って、社会構造イノベーションの重要な要素として、国民の価値観や暮らし方や財・サービスの選択が低炭素な方向に転換すること、すなわちライフスタイルのイノベーションが必要である。」としている。

家庭における低炭素化を一層推進するためには、これまでの物質の大量消費を豊かさとする価値観から脱却し、昨今の日常生活に係る機器等の技術革新と相まって、震災の発生や地域コミュニティ崩壊の危機等を契機として、新たな価値観の芽生えによる「真に豊かで持続可能なライフスタイル」(低炭素ライフスタイル)への転換が求められていると考える。

このため我が国が目指すライフスタイルとして、地域に根付いた生活様式等も活かし、エネルギーの効率利用のもとで豊かに暮らせる新しい低炭素ライフスタイルを創出し、社会の中で定着するための基礎的調査研究及び地域の中核拠点から国民に向けムーブメントを起こすための仕組みづくりを確立すること。